今月の標語 2018年

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2018年 「1月の標語」

怨みをもって怨みに報ゆれば
怨みは止まず
徳をもって怨みに報ゆれば
怨みはすなわち尽く

――― 『伝述一心戒文』伝教大師最澄

平成29年12月7日午後8時半ごろ、東京・江東区富岡の路上で、近くの富岡八幡宮の宮司の富岡長子さん(58)と運転手の33歳の男性が、車から降りた直後に刃物で切りつけられました。長子さんはまもなく死亡し、男性も腕などに大けがをしました。
また、長子さんの弟の富岡茂永容疑者(56)と妻の真里子容疑者(49)もすぐ近くで倒れていて、茂永容疑者が妻と一緒に長子さんと運転手に切りつけ、さらに妻を殺害して、自殺したと見られています。
関係者によりますと、富岡長子さんと弟の茂永容疑者は、長年にわたってトラブルになっており、最近「再び宮司になりたい」などと、富岡八幡宮の宮司の職をめぐって対立し、長子さんが警察署に相談していたとのことです。

全国の神社が加盟する神社本庁などによりますと、平成6年11月、茂永容疑者はそれまで宮司を務めていた父親に代わって宮司代行に就任し、翌年の平成7年3月から宮司を務めていました。
しかし、富岡八幡宮の関係者などによりますと茂永容疑者は素行不良・金銭トラブルなどで平成13年5月に宮司を退任し、父親が再び宮司に就任していました。
神社と付き合いの長い70代男性商店主は、茂永容疑者は「日本に5、6台しかない高級外車を乗り回し、高校時代の同級生たちと銀座のクラブで飲み歩いていた」と振り返っています。
2回の離婚歴もある茂永容疑者に対し、父親は当時、相続権剥奪を裁判所に請求しておりました。

富岡八幡宮の基本財産は約3億3500万円。1991年に佐川急便グループの佐川清会長(当時)が奉納した神輿(みこし)は純金やダイヤモンド、ルビーがあしらわれ、蔵も含めて総額10億円とも言われ、大変話題になりました。
そして、7年前の平成22年に富岡長子さんが父親のあとを継いで宮司代行に就任しました。富岡八幡宮の総代の代表でつくる役員会は、長子さんを宮司に任命するよう、神社本庁に複数回にわたって申し入れていましたが、神社本庁が協議した結果、おととし1月、長子さんが宮司になるために必要な研修を受けていなかったことなどを理由に、宮司への就任を認めなかったということです。
すると、今年6月になって、八幡宮側は神社本庁を離脱すると通知し、9月、長子さんが正式に宮司に就任したということです。警視庁によりますと、茂永容疑者は宮司を退任したあとの平成18年1月、「ことし中に決着をつける。積年の恨み。地獄へ送る」などと書いたハガキを長子さんに送り、脅迫したとして、逮捕されたこともありました。(出典:NHK Newsなど)

富岡八幡宮は江戸時代に創建された都内有数の神社で、現場は、東京メトロの門前仲町駅から300メートルほど東に行ったあたりで、実は、私は数十年前、縁あってこの地域に2年間ほど住んでいたことがありました。
富岡八幡宮の西には成田山東京別院深川不動堂もあり、この辺りは典型的な門前町です。

富岡八幡宮はお宮としての収入のほかに、このあたり一帯の土地を所有し、不動産収入もかなりの額に上ったようで、富岡家と一般庶民の経済感覚とは、桁が違うことは容易に理解できます。
だからこそ、その莫大な財産や、有名な神社の宮司という名誉をめぐって、骨肉の争いが起きたものと思われます。多くの人々の尊崇を受け、先祖代々受け継がれてきた神社の歴史と責任の重みを痛感していれば、このような凄惨な事件は起こるはずもなかったと思いますが、一族が神社を私物化した挙句の愚行でありましょう。

今月の標語は、伝教大師最澄上人の弟子である光定がまとめた最澄の回顧録「伝述一心戒文」中の御言葉です。
即ち、「怨みに対して報復で応じれば際限がなく、相手を怨むのではなく、徳をもって相手に接し、許すことができれば怨みはなくなる」ということです。

実は、このことは、お釈迦様が、最澄をさらにさかのぼること1000年以上前に、以下のように述べておられます。
「じつにこの世においては、怨みに対して怨みを返すならば、ついに怨みの鎮まることがない。怨みを捨ててこそ鎮まる。これは普遍的な真理である。」『ダンマパダ』5

さらに、お釈迦様と同時代に生きられた孔子も『論語』の中で、以下のように説かれます。
「或曰、以徳報怨、何如。子曰、何以報徳。以直報怨、以徳報徳」。(憲問第十四 378)
(あるひひといわく、徳をもって怨みに報いばいかん。子のたまわく、何を以ってか徳に報いん。直き(誠意)を以って怨みに報い、徳を以って徳に報いん。)と。
即ち、怨念に対しては誠意で対処せよと、孔子は説きます。

同じくイエス・キリストも、「右の頬を打つ者がいたら、左の頬も出しなさい!汝の敵を愛し、自分を迫害する者の為に祈りなさい!報復してはいけない!!」と唱えました。人に殴られるほどの理不尽なことをされたら、カッとなって仕返ししてやりたい!と思う気持ちは誰にでもあると思いますが、やり返したら復讐の連鎖の罠にはまってしまうでしょう。

奇しくも お釈迦様、孔子、イエス・キリストという、世界の三大聖人がいずれも「怨念を受けても、それに対し、怨みで返してはならない。」とおっしゃっているということは、怨む心を何とかして克服しなければならない、と説いているのです。

怨念は邪念の代表的なものですが、アメリカの心理学者スコット・ペックは、邪念の根源を@知的怠惰…無知・無明と、A病的なナルシシズム…病的な自己愛にあると云っているようです。
「邪悪な人とは、「誤った自己愛(ナルシシズム)から生まれた完璧な自己像を守るために、人をスケープゴートにする人」のことを指す。こうした誤ったナルシシズムを持ってしまった人は、自分を守るために全く無自覚に嘘をついたり人を非難したりする。しかし邪悪な人々が邪悪である所以は、あくまでもそうした行動をとるからではなく、無意識のうちに自分の欠点と向き合う苦痛から逃れ続けようとするところにある。」『平気でうそをつく人たち 虚偽と邪悪の心理学』(草思社文庫)
まさに今回の富岡家の人々にぴったりと当てはまりますね。

富岡茂永容疑者が、事件直前にA4判8枚につづった“遺書”の最後には、以下のように書かれていました。
「もし、私の要求が実行されなかった時は、私は死後に於いてもこの世(富岡八幡宮)に残り、怨霊となり、私の要求に異議を唱えた責任役員とその子孫を永遠に祟り続けます」

ここで、ほとんどの方が、富岡茂永容疑者が、本人が望んでいるように、本当に「怨霊となり永遠に祟り続ける」ということができるものか、心配なさると思います。
 私は、家々の御仏壇の前での読経を仕事としておりますが、よく仏壇に供物以外の様々なものをお供えしてあるお家があるので、意地悪を言うことがあります。「Aさん、もしあなたが今日死んだとします。お子さんが、宝くじをお供えし、チ〜ンとおリンを鳴らして、当たりますように…とお祈りされたとして、あなたそのくじを当てることできますか?」と聞きます。当然ながら、「できません」と100%の方が答えます。でも現実には、お仏壇に参るとき、多くの方が色んなお願いをするのです。何か人が死んであちらの世界に行っただけで万能になったような錯覚を持ってしまうのですが、現実にはそういうことは起きません。様々なことをお願いされてもご先祖様を当惑させるだけです。人は死んでも、その人の霊のレベルにあった状態になるだけだからです。
「お守りください」などと、仏壇の前でお願いするくらいなら、最強のガードマンを雇った方が、効き目はあると思いますよ。あるいは、希望校を受験して合格したいなら、それに見合った勉強をする以外に方法はないでしょう。

それと同じで、どれだけこの富岡茂永容疑者がそれを望んだとしても、怨霊となり永遠に祟り続けるなどということは、不可能なことなのです。自分の霊性のレベルにあった最下層即ち、地獄に行くだけのことです。あるいは可能性としては、この人たちは自分たちが死んだことも気が付かず、いつまでもお互いに傷つけあい、そこら辺でのたうち回っていることはあるかもしれませんね(~_~;)
我々は当然ながら、神々のレベルではないのですから、霊となって他に良い影響も悪い影響も及ぼしようがないのです。ただ、神々の対局として、悪魔的な低級霊がいることも事実です。低級霊は、主に、人々が沢山集まるような場所をうろつき、いたずらの機会を狙っています。私が、坐禅会やヨガ教室に人が沢山来ない方を好むのもそういう理由があります。
このような霊に対して私たちがとるべき態度は、自分が霊的に高まるように努力し、体力的にも、弱くならないよう努めて、低級霊に付きまとわれないようにすることでしょう。常に自身の霊格の向上にさえ努めていれば、低級霊など気にすることはないと思います。
三大聖人が説かれるように、人から怨念を受けたとして、それに取り合わず、怨念を自分が持たないようにすることしかないのです。


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